トップアンサンブルシリーズ2027/1/31公演に登場
ほのカルテット
インタビュー
大阪国際室内楽コンクール2023第1部門で第2位を獲得後、活躍の幅を広げる弦楽四重奏団ほのカルテットが、今年度のトップアンサンブルシリーズ3公演目に登場します。プログラムの選曲意図や聴きどころ、コンクール後の歩みについて伺いました。

ザ・フェニックスホールに集う トップアンサンブルシリーズ
ほのカルテット
2027年1月31日(日)15:00開演
あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
プログラム
- ハイドン:弦楽四重奏曲 ハ長調 op. 20-2
- メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調 op. 80
- ブラームス:弦楽四重奏曲第3番 変ロ長調 op. 67
出演者
- 岸本 萌乃加 (ヴァイオリン)
- 林 周雅 (ヴァイオリン)
- 長田 健志 (ヴィオラ)
- 蟹江 慶行 (チェロ)
今のほのカルテットに合う3曲
――トップアンサンブルシリーズ初登場となるほのカルテットの皆さん。最初に今回のプログラムの選曲について教えていただければと思います。まずは、数あるハイドンの弦楽四重奏曲の中からop. 20-2を選ばれたのはどうしてですか?
蟹江:ハイドンは自分たちが好きで、積極的に取り組みたい作曲家なんです。最初に受けた宗次ホール弦楽四重奏コンクールでは第3位に加えて「ハイドン賞」をいただき、その後古典派作品の演奏で評価していただくこともあって、プログラムを組む時にはハイドンの楽曲から選ぶことが多いです。op. 20-2は、チェロのメロディから始まる華やかな雰囲気の曲。ハイドンの弦楽四重奏曲はop. 33以降に重要な作品が多いと言われることもありますけど、実はそれ以前にもこんなにいい曲がある。この曲が今のほのカルテットに合うと思って決めました。
林:余白が多くて自由度が高い曲が、今の自分たちにしっくりくるのかなと思っています。テンポの変化や装飾の入れ方とか、各々が「こういうふうにやりたい」ということを織り交ぜていける。ハイドンの曲は楽譜に書いてあることをとにかく忠実に弾くというよりは、自分たちが感じたことを、どのように音楽にブレンドしていくかも大切だと思います。そういう自由さが今の自分たちに合っている気がします。
――メンデルスゾーンの第6番は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲の中では異色で、陽気な雰囲気とは離れた曲ですよね。
林:2023年の大阪国際室内楽コンクールに参加する前にも一度弾いたことがある曲なんですが、5番の華やかな雰囲気から一転する、6番ならではの深さや重さを改めて表現したいと思って選曲しました。
岸本:大阪のコンクールで5番を選曲したこともあって、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲の中で私たちが一番多く弾いてきたのが5番です。今回はその5番とのつながりという意味でも、6番を選びました。
蟹江:メンデルスゾーンが死と強く向き合っていることが感じられる作品は異例だと思います。そうした作曲家の一面にも触れていただけたら。
――そして、ブラームスの3番。ヴィオラがとても印象的な曲ですが、長田さんはこの曲にどんな思いを持っていらっしゃいますか?
長田:ブラームスの3番は、初めて取り組む曲です。ほのカルテットとしてブラームスの弦楽四重奏曲を演奏すること自体が初めてなので、挑戦です!1番、2番を経て書かれたこの3番は、ブラームスの弦楽四重奏曲の集大成だと思っています。とても壮大で、弦楽四重奏の枠を飛び出そうとしているようなスケールを感じます。ブラームスの思いが伝わるような演奏をしたいです。
――コンサートで演奏する曲を選ぶときは、メンバーの中でどのように話し合って決めていくのですか?
蟹江:僕と彼(長田さん)は割とこだわりがないタイプで、なんでもやりたい。上二人(岸本さん、林さん)が僕たちに合う、合わないを判断するセンサーが強くて、この曲どう思う?と訊いたときに直感的に判断してくれます。
大阪国際室内楽コンクールから広がった経験
――ほのカルテットの皆さんは、2023年の大阪国際室内楽コンクールで第2位を受賞されましたね。今年5月にはその次の回となる第12回コンクールが開催されましたが、配信などご覧になりましたか?
蟹江:見ていました!今回は1次ラウンドと2次ラウンドに全ての団体が演奏されていたこともあって、楽しくたくさん聴かせていただきました。拠点国による演奏の違いも感じましたが、今回は特に団体ごとの豊かな個性を感じました。
林:サントリーホール室内楽アカデミーの後輩であるカルテット風雅(第2位を受賞)が出ていたので、もちろん配信も見て、毎ラウンドの後、全員と電話で話していました。僕たちが2023年のコンクールの時、ゲン担ぎとして毎ラウンド終わるたびに行っていた焼き肉屋がホテルの近くにあって、そのお店に行ったら、と勧めたりもしました。実際にカルテット風雅はそこに食べに行ったみたいです。
蟹江:コンクールの配信ってとても助かるんですよ。自分たちが出ていたときは、同じコンクールを受けている他の団体の皆さんがどういう演奏をするのか聴きたくて、リハーサルの合間に配信を見たり、自分たちの審査演奏が終わったらすぐアーカイブを見たり。
――コンクールで演奏する傍らで、他の団体の演奏も聴かれていたんですね!
林:演奏も聴きたいし、休まないといけないし、次のラウンドの練習もしたいし、時間は有限だと思いました。でもやっぱり4人であんなに真剣に音楽に向き合ったというのはものすごく大きな経験でした。

――2023年のコンクールでは第2位の他に大阪国際室内楽コンクールアンバサダー賞を受賞、2024年12月にミュンヘンに招待されて演奏されましたね。
林:日本で勉強してきたことがクラシックの本場ドイツでも通じたんじゃないかなということは、一つの自信につながったと思います。美術館(ピナコテーク・デア・モデルネ)で演奏させてもらった時には、弓を上げて弾きはじめる瞬間に、聴衆の方がこちらにものすごい集中力を向けてこられるのを感じました。
岸本:ドイツでは聴衆の方たちの雰囲気が何というか温かくて、お客さんの表情から、コンサートの空間全部を楽しみに来てくれている感じが伝わってきました。
林:サヴァリッシュ財団(世界的指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュが設立した、若手音楽家を育てる音楽財団)の演奏会は特に、開演前のお客さん同士の会話も聞こえてきたりして、日常の中にコンサートが溶け込んでいるのを感じました。本番の前にかぼちゃスープを出していただいてその場所からホールに行く途中の道に明かりが灯っていて、その道を上っていってホールについて弾く……映画のセットみたいな光景で、毎日これしたい!と思っていました。
――第12回のコンクールからは、新たに特別賞として「サヴァリッシュ室内楽賞」が設けられました。ほのカルテットの皆さんがサヴァリッシュ邸で演奏され、その公演が好評だったことも、今回の賞の新設を後押ししたのではないかと思います。

これからのほのカルテット
――皆さんは、SNSでおひとりおひとりの個性が伝わる投稿をしたり、オリジナルグッズを販売したりと、ファンの方を意識した様々な広報活動を進めていらっしゃいますね。
蟹江:社会に出て、時代が変わったんだなと感じることが多くて。今までは、どこかに所属したり演奏会を企画してもらったり、ステージを準備してもらう演奏家が多かったと思うんですけど、今はやっぱり自発的に何かを生み出していく必要がある。どうやって継続していくかを考えたときに、物販もひとつの策だなと。自主公演では新たにステッカーやクリアファイル、トートバッグを用意して、限定色も作ったりして。
林:いずれヴァイオリンとか売る?(笑)ほのかルモデルの弦楽四重奏セットとか。
――今後も色々な展開を楽しみにしています!最後に、トップアンサンブルシリーズの公演に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
蟹江:弦楽四重奏というのはニッチなジャンルですが、このジャンルの演奏会に行こうかと考えてくださること自体に、まずは感謝を申し上げたいなと思います。
長田:今回は特にカルテットとして初めて挑戦するブラームスで、ブラームスが何を思って第3番を書いたかを、皆様にお伝えしたいです。
岸本:演奏を聴いてくださるお客様に自分たちの変化や成長を感じていただき、その感想を伺えることはとても嬉しいことだと感じています。
林:コンクール後は国内外で色々な演奏機会に恵まれ、もっとこうしたい、こうあるべきといったメンバー間のディスカッションも以前よりぐっと増えました。自分たちの音楽がどう成熟してきたのか、ぜひ聴いていただけたらと思います。
ほのカルテット
HONO Quartet
2018年1月東京藝術大学在学中に結成。始動半年で第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクールで第3位およびハイドン賞(課題曲賞)を受賞。2019年5月に第8回秋吉台音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位受賞。2021年度プロジェクトQ・第19章に参加。2023年5月に大阪国際室内楽コンクール2023第1部門(弦楽四重奏)において、日本人団体として過去最高の第2位およびアンバサダー賞を受賞。2024年12月にミュンヘンで開催された室内楽フェスティバル「メンシュ-クラング-ラウム・ビエンナーレ」に、同コンクールのアンバサダーとして参加。2020年に松尾学術振興財団の奨学金を受ける。これまでに松原勝也、市坪俊彦の各氏に師事。現在は山崎伸子氏の元で研鑽を積んでいる。これまでに、ヘンシェル・クァルテット、クァルテット・エクセルシオ、澤和樹、山崎伸子、鈴木康浩、村治佳織の各氏と共演。サントリーホール室内楽アカデミー第7・8期フェロー。
【お知らせ:出演メンバーの変更について】
ヴァイオリンの岸本萌乃加さんは、出産のため今回の公演への出演を見合わせる運びとなりました。代わりまして、石原悠企(いしはら ゆうき)さん(読売日本交響楽団首席第2ヴァイオリン奏者)が出演します。演目に変更はございません。何卒ご了承ください。
