クァルテット・エクセルシオに聞く「トップアンサンブルシリーズ」公演の聴きどころ
結成から30年以上活動を継続するクァルテット・エクセルシオ。2026年1月31日の「トップアンサンブルシリーズ」公演は、室内楽の名曲から近現代作品、そしてオリジナルともいえるレパートリーまで、常設の弦楽四重奏団ならではのプログラム構成です。それぞれの楽曲について、メンバーに聞きました。
ザ・フェニックスホールに集う トップアンサンブル シリーズ 2025-2026
クァルテット・エクセルシオ
~弦楽四重奏に託されたオーストリア、チェコ、日本の歌心~
2026年1月31日(土) 15:00開演
あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
曲目
- ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ長調 op.76-5「ラルゴ」
- シュルホフ:弦楽四重奏のための5つの小品
- 幸松肇 編曲:弦楽四重奏のための日本民謡集から「箱根八里」、「佐渡おけさ」
- シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810「死と乙女」
――ハイドン「ラルゴ」とシューベルト「死と乙女」は、数ある弦楽四重奏曲の中でも大変な名曲です。曲の作り方に何か特徴はありますか?
西野:「ラルゴ」はとても生き生きとした元気のある曲ですね。
それに、ハイドンの初期作品に比べると4パートの役割分担も変わってきて、膝を突き合わせて語り合って弾いているような感じがします。
大友:ハイドンの後期は、ベートーヴェンにつながるスタイルというか、テーマを4パートにほぼ平等に振り分けていっている。
実はシューベルトってそうでもないんですよ、むしろハイドンの方が平等に扱われている感じがする。シューベルトは伴奏という役割の部分が明確にある。
そういう意味は、実はハイドンよりもシューベルトの方が古典的な様式を使っている感じもします。
吉田:そう、シューベルトってハイドンより後の人で、ヴィオラのメロディは増えるけど、内声の役割は古典とあまり変わらないと思います。
西野:シューベルトの特に後期の作品は、それぞれのパートのエネルギー量が大きくて、何か4人で戦っているような感じも出てくる。もちろん、実際には4人で共同作業しているのだけど。それは、ハイドンの「語らっている」感じとは大きく異なります。
メロディと他の役割のバランスの間で、すごく重要なエネルギーを蓄えている感じです。
大友:シューベルトってメロディとそれ以外の役割がはっきり異なっている。
それに比べると、ハイドンはどれがメロディか分からなくなるような、平等感を感じるような構成。
西野:そのバランスを考えていくのが難しくもあり、クァルテットの個性が出そうだよね。
ハイドンやベートーヴェンは、そのような構築感がとても大切。
それに比べて、シューベルトは(構築感では無く)歌が先にあった音楽だと感じます。メロディありきで、音楽を作っていった。


――そういう意味では、どちらも弦楽四重奏のスタンダードな作曲家ですが、ハイドンとシューベルトの対比を感じることができますね。
シュルホフはどういった意図でプログラムに入れられたのでしょうか?
吉田:たしか、以前ヘンシェル・クァルテットが弾いていたのを見て、改めて音楽を聴いてみて、面白い曲だと思いました。
西野:シュルホフも“歌”を感じる曲ですが、シューベルトとは全く違った作風で、踊っているようなリズム感が出てきます。あと結構ヴィオラの良さを引き出していて、良い音色を奏でるところが結構あります。そういうところに注目してほしいです。


――幸松肇さんの編曲による作品も取り上げられますね。クァルテット・エクセルシオとのお付き合いが大変長い方でした。
大友:1996年に大阪国際室内楽コンクールに出場した翌年頃のコンサートでは、彼の日本民謡を弾いていましたね。あるレクチャーコンサートの時に、楽譜があるので日本民謡を弾いてくれと言われて、その時に幸松さんが聴きにいらして、気に入ってくださって。そこからの付き合いです。
――バルトークやメシアンなど、民族的な歌を採集して自身の楽曲に取り入れる作曲家がいますが、幸松さんも日本民謡を取り入れて作曲をされたんですよね。
西野:大友さんが良く言うけど、幸松さんはただ歌をそのままメロディにしたわけではなくて、作曲していらっしゃる。
大友:そう、幸松さん本人は編曲っておっしゃるけど、編曲じゃないよね。
西野:イメージが詰め込まれたひとつの作品の中から、新たな民謡が聞こえてくる。
ハーモニーにどれも幸松先生の個性が光っています。
吉田:幸松先生はご自身も弦楽器を演奏されていたから、それぞれの楽器のことを分かっていて、弦楽器の良さがとても活きています。
粟津:第1集と第2集は良い意味でキャッチーで、民謡のメロディを結構重視している部分があるのに比べて、第3集は特に力が入っている気がしました。
少し渋くて派手さが抑えられている分、弾きこみたくなるような作品です。
――エクセルシオは、幸松さんの出版されている弦楽四重奏曲は全部録音されているんですか?
大友:はい。第4集はまだ出版されていないけどCDには入っていますよ。
――作曲家と演奏家で、生きているうちに作品集をすべて録音するというのはなかなか稀有な間柄かもしれないですね。深い関係性に裏打ちされた熟練の演奏を楽しみにしています。
ありがとうございました!
